無風日記

無からうまれた無太郎の無風な日々

【読書記録】世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR (角川文庫) 内澤旬子

常の如くうすーい感想。

世界の屠畜場、屠畜事情を取材したルポ。ちょっと著者の「屠畜を自身のことと受け入れ、愛するワタクシ」みたいな優越感みたいなのが鼻につくこともありますが、興味深く読みました。

屠畜、食肉処理に対する差別意識のあり様を課題として、世界各地の事情を垣間見ることができます。屠畜とは、生命をただ無闇に奪うのではなく、生かす/活かすこと、という点にはなるほどと思わされる。自分たちは日々の暮らしで肉を食べているにも関わらず、屠畜の現場に触れることはない。もっと家畜を哀れむべし、屠畜する人々を有り難がるべし、とまでは思わないが、我々の血肉になる生命と、それに携わる人々を尊重するべきとは思う。

ちょっと話はずれるけれど、私は「死」というものを畏れている。身内の葬式でも遺体にほとんど触れることはできなかった。触れてあげたいという愛情を上回るほどの畏れ。小動物や虫の死でもなかなか恐ろしいと感じ慄いてしまう。子ども時分に残酷にも虫を殺してしまった時、その瞬間恐ろしくなって固まってしまった思い出もある。釣った魚から流れる血を見て逃げ出してしまったこともある。そんな私からすると、屠畜に関わる人々というのはすごいなあ、と単純に感心してしまう。直前まで生きていた家畜が自らの手で食肉なっていく、それを想像するだけで体がすくんでしまうくらいなので、ちゃんとプロとして尊重されてほしいなぁと思う。

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